| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-171 (Poster presentation)

植物と訪花鳥類との相互作用ネットワーク構造:市民モニタリングデータによる分析

*吉川徹朗(東大院・農), 井鷺裕司(京大院・農)

近年、生物間相互作用のネットワーク構造に注目した研究が進展している。だがそれらの多くは、単一タイプの相互作用ネットワークだけを取り出し、その構造を解明するという方法に拠っている。だが生態系においては複数タイプの相互作用ネットワークが互いに合わさり絡みあって存在しており、これらを統合して理解することが不可欠となる。

本研究では、鳥類と動物媒花とのネットワークに相互作用タイプを組み込んで分析した。神奈川県内の低地林における両者の相互作用の量的ネットワークを、日本野鳥の会神奈川支部による市民モニタリングデータにおける観察記録から構築した。さらに、報告された採餌行動(送粉/捕食)を精査することで、この全ネットワーク(鳥類24種・植物60種)を、相利的サブネットワーク(以下MS)と敵対的サブネットワーク(以下AS)とに解きほぐし、それぞれの構造を分析した。

2つのサブネットワークを比較すると、MSはASよりも限られた種数の鳥・植物種から成立していた。またMSは入れ子度が高く、スペシャリゼーション(特殊化)およびモジュラー性が低いという傾向が見られた。MSにおける主要な鳥類はメジロとヒヨドリの2種だが、メジロはほとんどの場合送粉するのに対し、ヒヨドリは送粉だけでなく幅広い種の花を捕食し、MS, ASの双方で主要な鳥類となっていた。ヒヨドリの採食行動は花サイズに依存しており、中程度のサイズの花で吸蜜・送粉する傾向が見られた。

以上の結果は、鳥類と花とのあいだで相利関係と敵対関係が絡みあっていることを示しており、その生態・進化を理解するためには前者だけでなく後者にも注目する必要性を示唆している。またヒヨドリで見られたような可塑的な採食行動が、ネットワーク構造全体を理解するうえで重要であることも明らかになった。


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