| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-173 (Poster presentation)
一般に、蘚苔類を専食する昆虫の種は、被子植物を食べる昆虫と比べて極めて少なく、しかも寄主植物に対する特異性が低いと考えられている。ところが、双翅目や鱗翅目の基部には、コケの群生地に棲息し、特定の種の蘚苔類のみを餌としている種群があることが確かめられつつある。シギアブ科 Rhagionidae は、ジュラ紀初期に短角亜目 Brachycera の中で最も初期の放散を遂げたグループの一つである。Kerr(2012)によると本科は4つの亜科からなり、日本ではこれまでに6属約49種が知られている。一部の種の幼虫は捕食性であると考えられているが、コケ植物を食べる種の存在も知られていた。本研究では、日本国内を中心とした126地点で271個体のシギアブを採集し、そのうち261個体について寄主植物を特定した。その結果、葉状苔類の葉状体に潜葉する生活史をもっていることが明らかになった。さらに、核遺伝子の塩基配列に基づく系統解析によって、これらの苔類食のシギアブの系統関係を推定した。これらの結果をもとに、コケ植物に対する寄主特異性、寄主転換のパターンに関して推察する。