| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-174 (Poster presentation)
植物の生産する化学物質は昆虫と植物の相互作用において重要な役割を担っている。それらの組成は遺伝的要因、成長段階、病害虫種、環境要因など様々な要因によって変化し、その変化によって昆虫と植物の相互作用における化学物質の機能も変化する。例えば、植物‐植食性昆虫‐捕食性昆虫3者による相互作用においては、捕食性昆虫が餌種の食害する植物の揮発物質に応答するが、非餌種の食害する植物の揮発物質に応答しないという特異性が報告されている。我々は寄生蜂エルビアブラバチ(以下エルビ)が寄主とするエンドウヒゲナガアブラムシに食害されたソラマメの揮発物質と寄主ではないマメアブラムシに食害されたソラマメの揮発物質を識別することを明らかにしてきた。今回、このエルビアブラバチの特異的な応答を引き起こす化学的要因を明らかにするため寄主、非寄主が食害した株由来の揮発性物質に対するエルビの応答を調査した。Y字管を用いた選択実験において、エルビはエンドウヒゲナガアブラムシの食害で特異的に誘導される6化合物のうち3化合物を単成分で溶媒のコントロールよりも好み、6化合物のうち寄主ではないマメアブラムシの食害でより多く誘導される1化合物を単成分で忌避した。6化合物のブレンドに対しては単成分の時よりも低い濃度で応答した。また、マメアブラムシ食害株に特異的な揮発物質と寄主食害株の揮発物質とを混合したサンプルと、寄主食害株の揮発物質を与えた場合、後者を好んだ。エルビによる寄主食害株の特異的な揮発物質への応答には、寄主食害株特異的な化合物による誘引的因子と、非寄主食害株に特異的な化合物による忌避的因子が関与していると予想された。