| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-178 (Poster presentation)

富士山のホシガラスはゴヨウマツを貯食する II:ホシガラスの貯食行動はゴヨウマツの遺伝構造にどのような影響を与えるのか?

*別宮有紀子(都留大),松木悠(東大・ア生セ),西教生(都留大),伊村智(極地研),練春蘭(東大・ア生セ)

ホシガラス Nucifraga caryocatactes は日本の高山〜亜高山帯に生息し、ハイマツ Pinus pumila の種子を貯食することでハイマツの種子分散に貢献していることが知られている。富士山北麓では4〜5合目周辺にホシガラスが生息するが、ハイマツは分布しない。演者らのこれまでの研究によって、富士山北麓のホシガラスはゴヨウマツ Pinus parviflora の種子を貯食すること、ゴヨウマツは1合目(標高1000m)から森林限界上部(標高2450m)まで広い範囲に分布し、標高が上がるにつれ個体サイズが小さくなり、森林限界上部には貯食起源の稚樹バンクが存在していることなどがわかっている。双眼鏡による直接観察では、ホシガラスは1~4.5合目に点在するゴヨウマツ種子を5合目森林限界上部にまで運び上げて貯食し、その最大散布距離は水平方向に10km、垂直方向に1500mに達すると推測される。これは動物による散布距離としては非常に大きく、ホシガラスの貯食行動はゴヨウマツの分布や更新動態、遺伝構造に大きな影響を与えている可能性がある。

そこで本研究では、富士山北麓のゴヨウマツの集団遺伝構造に対するホシガラスの貯食行動の影響を明らかにするために、標高の異なる5つの地点;Site-1(2450 m)、Site-2(2300 m)、Site-3(2150 m)、Site-4(1850 m)、Site-5(1100 m)からそれぞれ30~60個体の葉サンプルを採取し、マイクロサテライトマーカーを用いたジェノタイピングをおこなったので、その結果を報告する。


日本生態学会