| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-179 (Poster presentation)

クマ剥ぎが林内植生と光環境に与える影響

*高橋一秋(長野大・環境ツーリズム),高橋香織(信州大・遺伝子)

深刻な林業被害の一つであるクマ剥ぎは、人為的な巻き枯らし間伐(環状剥皮)と同様の効果を発揮し、広葉樹の侵入を促進する可能性がある。間伐が難しい奥山の針葉樹人工林においては、クマ剥ぎが針広混交林化を進める一要因となりうる。本研究では、クマ剥ぎが林床植物の種多様性と光環境の改善に果たす役割を明らかにすることを目的とした。

軽井沢町長倉山国有林のカラマツ人工林に計10個の調査プロット(20m×50m)を2012年8月に設置した。プロットに出現する全ての樹木(DBH>15cm)のDBHを計測し、クマ剥ぎによる枯れの状況を記録した。林床の光環境を評価するために、各プロットを10個のグリッド(10m×10m)に分割し、その中心で全天空写真(高さ1m)を撮り、相対光量子束密度(rPPFD)を算出した。各グリッドを4個の植生枠(5m×5m)に分割し、出現する木本種の種数および被度(1:0-20%・2:20-40%・3:40-60%・4:60-80%・5:80-100%)を階層別(0-0.5m・0.5-2m・2-5m・5-10m・10m以上)に記録した。

クマ剥ぎによる枯死木の出現率はカラマツで10.4%(32個体)、ヤマナラシでは20%(2個体)であった。一般化線形モデル(GLM)による分析の結果、林床のrPPFDは上層の被度とは有意な相関が認められなかったが、クマ剥ぎ枯死木の個体数とは有意な正の相関を示した。0-0.5mおよび0.5-2mの階層に出現した木本の種数とrPPFDの間に有意な正の相関が認められた。個々の種の出現頻度とrPPFDの相関をGLMで分析した結果、0-0.5mの階層では55種のうち8種が、また0.5-2mの階層では23種のうち6種が有意な正の相関を示した。以上の結果から、クマ剥ぎは林床の光環境の改善と木本種の種多様性の向上に貢献することが明らかになった。


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