| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-183 (Poster presentation)
熱帯林は陸上生態系のなかでもっとも豊かな生物多様性を擁し、その根幹を支えるのは昆虫類とそれらが利用する植物との関係である。熱帯林の植物と植食性昆虫との関係を明らかにすることが、生物多様性の実態や森林動態を理解する糸口となるだろう。しかしながら、熱帯林では、植食性昆虫の好適な餌資源の密度が高い林冠部へのアクセスが困難なことや、植物上の昆虫密度が低いため、直接観察や飼育のような従来の調査方法による寄主植物の特定は極めて効率が悪く、植物−植食者関係は未知であることが多い。そこで、本研究は東南アジア熱帯雨林に生息する植食性昆虫(甲虫目ハムシ科)と植物との関係を明らかにするため、灯火採集で集めたハムシ科成虫からそれらが食べた餌植物のDNAを抽出し、昆虫・植物それぞれのDNAバーコード領域(昆虫ではCOI領域・植物は葉緑体rbcLa領域)によってハムシ1種あたり(2-12個体)の寄主植物幅を調べた。その結果、調査した11種のハムシ科成虫のほとんどが複数の科の植物種を利用する広食性であることが示唆された。なかでも特に広食の種では、少なくとも11科の植物種を利用していることが示され、これまで比較的よく調べられている地域の広食性昆虫(2-3科の植物利用)と比べても顕著に多いことがわかった。本研究が提案する調査方法によって、直接の採餌行動を確認しなくても寄主植物を特定することが可能になり、より効率的に多くの植物-植食者関係を明らかにすることができるだろう。