| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-185 (Poster presentation)

気温変化がダケカンバの樹冠葉の食害度に与える影響―標高勾配によるパターンと温暖化操作実験を用いた検証―

*簑島萌子(北大・環境),齊藤隆,日浦勉,柴田英昭,中村誠宏(北大・FSC)

これまで標高勾配や緯度勾配を用いた研究が多く行われてきた。しかし、これらの自然実験では複数の環境要因が変化するため、影響を及ぼしている要因を特定することが困難である。そこで本研究では、標高勾配におけるダケカンバの食害度の変異が、標高によって変化する主な要因の1つである温度によってもたらされているかを、温暖化操作実験を用いることにより明らかにした。実験的に温度を操作することにより、多くの交絡要因を除いて温度の効果を検証することが可能になる。標高勾配の調査は羊蹄山の700m, 1000m, 1300m, 1600mの地点で行った。一方温暖化操作実験は、北海道大学中川研究林内で土壌温暖化区、土壌+枝温暖化区、コントロール区の3つの処理区を設けて、土壌温暖化、枝温暖化の効果を検証した。標高勾配の調査地と温暖化実験区において、ダケカンバの林冠部における食害度、葉形質(C/N比、窒素含量、縮合タンニン、総フェノール、LMA)、成長に関わる形質(葉サイズ、枝の長さ)を測定した。標高勾配の調査において、食害度は標高の増加に伴い減少した。また、標高の増加に伴い窒素含量、縮合タンニン、総フェノール、LMAは増加し、C/N比、葉サイズ、枝の長さは減少した。温暖化実験では、土壌温暖化は食害度を増加させ、縮合タンニンと総フェノールを減少させた。枝温暖化は食害度には影響を与えなかったが、縮合タンニンと総フェノールを減少させた。食害度は、標高勾配では縮合タンニンによって説明され、温暖化実験では総フェノールとLMAによって説明された。以上のことから、標高勾配における食害度の変異は、土壌の温度が縮合タンニンや総フェノールなどの化学防御物質を変化させることにより生じていると考えられた。


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