| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-188 (Poster presentation)
ニセアカシアに寄生するマメアブラムシは捕食者であるナミテントウに対して毒性を示すが、カラスノエンドウに寄生するマメアブラムシは毒性を示さない。そのため、この毒性の差は植物由来成分の違いに起因すると考えられる。カナバニンと2-アミノエタノールがその毒性物質とする報告があるものの、詳細は不明であった。一方、自然界にも存在することが近年になって明らかにされたシアナミドは、ニセアカシアには含まれているがカラスノエンドウには含まれていない。シアナミドは多くの生物種に対して毒性を示すことが知られているため、この成分が原因物質である可能性が考えられた。そこで本研究では、ニセアカシアとカラスノエンドウに寄生するそれぞれのマメアブラムシ体内に含まれる上記3成分を定量するとともに、ナミテントウ幼虫に対する毒性を評価した。その結果、いずれの寄主植物より採取されたマメアブラムシからもカナバニンは検出されず、2-アミノエタノールは検出されたものの低濃度であった。一方、ニセアカシアに寄生するマメアブラムシからシアナミドが検出されたが、カラスノエンドウに寄生するマメアブラムシからは検出されなかった。また、ナミテントウ幼虫に対し、シアナミドはカナバニンと2-アミノエタノールの10倍から100倍の毒性を示した。これらの結果を総合すると、ニセアカシアに寄生するマメアブラムシの毒性は、カナバニンと2-アミノエタノールではなくシアナミドに起因することが示唆された。