| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-193 (Poster presentation)

温帯林における二次散布者としての食糞性コガネムシの役割

*小池伸介,森本英人,小坂井千夏,曽我昌史(東京農工大学),山崎晃司(茨城県自然博),小金澤正昭(宇都宮大学)

果実食動物によって周食型種子散布され、糞に含まれた状態の種子の2次散布者としての食糞性コガネムシ(以下、糞虫)の機能を評価するために、3つの実験を行った。1つ目は、糞虫3種(オオセンチコガネ、コブマルエンマコガネ、カドマルエンマコガネ)による、ツキノワグマの糞に含まれた種子(ヤマザクラ、カスミザクラ、ウワミズザクラ、ミズキ、ヤマブドウ)と直径2mm、5mmの球形プラスチックマーカーの土壌内への埋め込みの深さを調査した。その結果、2mmのプラスチックマーカーは3種の糞虫とも埋め込みに成功したが、5mmのプラスチックマーカーと種子の埋め込みに成功したのはオオセンチコガネのみであった。埋め込む種子の量と深さは季節的に変化し、6月と7月はほかの月よりも多くの種子を土壌内に埋め込んだ。多くの種子は土壌3-6cmの深さに埋め込まれていた。2つ目は、前述の5種類の種子を、ポット内の様々な土壌の深さごとに設置し、それらの種子の発芽率を測定した。その結果、土壌1-4cmの深さに設置した種子の発芽率は、それらよりも深くに設置した種子や土壌表面に設置した種子の発芽率よりも高かった。3つ目は、同じく5種類の種子を、野外の様々な土壌の深さごとに設置し、げっ歯類等による持ち去り率を測定した。その結果、土壌表面に設置した種子の多くは消失したが、種子を設置した土壌が深くなるに伴い、種子の持ち去り率は低下した。以上の結果より、糞虫、特にオオセンチコガネは糞を利用する過程で果実食動物によって散布された種子の2次散布者として機能する可能性が高いと考えられ、糞虫によって土壌内に種子が移動されられることで、種子の発芽促進とげっ歯類等による持ち去りを抑制する効果が高いと考えられる。


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