| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-195 (Poster presentation)
木材生産をおこなう人工林地域で広葉樹林を残すことによって効果的な生物多様性の保全を図るため、広葉樹林の面積・配置がハナバチ類の数量とカスミザクラの結実・交配に与える影響を明らかにした。
北茨城市と高萩市に設置した12ヵ所の調査地のそれぞれに4つの誘引トラップを置き、5, 7, 9月にハナバチ類を捕獲し、マルハナバチとその他のハナバチの個体数と湿重を測定した。また、それらの調査地の標高、周囲10, 100haの広葉樹林率、風媒と虫媒の樹木の胸高断面積合計を記録した。その結果、マルハナバチの個体数と湿重は、周囲10haの広葉樹林率に非線形に回帰され、中間的な広葉樹林率で最も多かった。また、その他のハナバチの個体数と湿重は、標高と周囲10haの広葉樹林率に依存し、標高と広葉樹林率が高くなると増加した。
一方、これらの調査地のカスミザクラは、遺伝的構造がほとんどなく、ひとつの任意交配集団とみなされた。開花木の位置と幹周囲を記録し、結実期に12母樹から枝を採集した。それらの枝の花序あたり果実数などを測定した。また、枝の葉と果実の種子の胚からDNAを抽出し、核SSRの9遺伝子座の遺伝子型を決定した。そして、母子の遺伝的多様性と近交係数、二親性近親交配、父性相関を推定した。また、それらの調査地の標高と周囲の広葉樹林率の他、開花木密度、胸高断面積合計、葉緑素計数値を記録した。その結果、母子の遺伝的多様性はほぼ同じで、近交係数は子が母より高かった。花序あたり果実数などと二親性近親交配に与える要因は、はっきりしなかった。父性相関は開花木密度が低下すると高くなったが、景観の影響はみられなかった。