| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-196 (Poster presentation)
日本の高山には、マルハナバチに送粉を依存している植物種が多い。従って、彼らの花資源利用スケジュールを把握することは、高山の生態系を理解する上で重要である。
これまでに、Tomono and Sota (1997: Jpn J Ent 65: 237-255)が、乗鞍岳の調査をもとに、ヒメマルハナバチは亜高山で営巣/繁殖し、夏の間だけ働き蜂が高山へ出稼ぎに行くことを示唆している。しかし、このパターンが他の山域でも一般に当てはまるのかはわかっていない。また、他のマルハナバチ種が、標高をまたいで花資源をどのようなスケジュールで利用しているのかは、詳しく調べられていない。そこで本研究では、中部山岳国立公園立山において、マルハナバチの花資源利用スケジュールを、異なる標高間で比較した。
調査は、立山の山地-亜高山帯(977-1630m)及び高山帯(2450-2830m)で、2011-12年に行った。観察されたマルハナバチの種、カースト、訪花植物種、個体数、マルハナバチが利用する植物種の開花数を、季節を通じて記録した。
その結果、ヒメマルハナバチはどの標高帯でも、春と秋に繁殖カーストが多く観察された。この結果は、Tomono and Sota (1997)とは異なり、ヒメマルハナバチがどちらの標高でも営巣していることを示唆している。一方、オオマルハナバチは、高山帯で初夏に働き蜂の一時的な個体数増加がみられた。高山帯では、オオマルハナバチの繁殖カーストは季節を通じて観察されないことから、初夏に花資源が少ない山地帯や亜高山帯から移動していることが示唆された。
以上の結果から、マルハナバチの標高をまたいだ花資源利用スケジュールは山域によって異なっており、そのパターンもマルハナバチ種によって異なっていることが示された。