| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-200 (Poster presentation)

林床性草本ヒメカンアオイとミヤコアオイの繁殖生態: 訪花昆虫相と結実特性について

*根路銘恒次(大阪教育大・大学院),岡崎純子(大阪教育大・理科教育)

ウマノスズクサ科カンアオイ属(Asarum)植物はアリ散布植物として知られ、その分散力の低さから種分化研究の材料とされてきた。材料としたヒメカンアオイ(A. takaoi)とミヤコアオイ(A. asperum)は、宅地造成や里山の荒廃により個体群が減少している植物でもある。両者の花形態の違いから繁殖様式が異なるものと指摘されているが不明な点が多い。ミヤコアオイでは、杉浦 et al.(1999)がキノコバエの仲間とヤスデ等の地表徘徊性動物が花粉媒介者であると報告している。さらにその遺伝構造から外交配主体であると考えられている(石田,2003)。一方、ヒメカンアオイでは日浦(1978)が花粉媒介者として地表徘徊性動物の可能性を述べているが詳しい報告はされていない。

そこで本研究では両種の繁殖生態、特に訪花昆虫相と交配様式を明らかにするために、大阪府太子町・柏原市、奈良県王寺町のヒメカンアオイ3集団およびミヤコアオイ2集団を用いて次の調査を行った。(1)訪花動物相を調べるために、24時間および12時間の定点観察を行った。(2)交配様式を調べるために交配実験を行い、結果率および結実率を比較した。

その結果、(1)ヒメカンアオイでは訪花を確認した11種類のうち8種が双翅目の飛翔性昆虫であった。一方ミヤコアオイでは3種の訪花が確認され、全て地表徘徊性動物であった。(2)交配実験の結果、ヒメカンアオイは自動自家受粉では結実が見られなかったが、人工自家授粉では結実が見られ自家和合性であることが判明した。ミヤコアオイでは自動自家受粉による結実も見られ、自然条件と自動自家受粉・人工自家授粉・他家授粉に結実率の差は見られず自家和合性であることが判明した。この2種では花の形態の違いが、訪花昆虫相の違いや交配様式の違いを引き起こしているものと考えられる。


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