| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-208 (Poster presentation)
多くの分類群では,体サイズの種間変異を頻度分布で表すと,分布が右に裾を長く引いた形になる。つまり,極端に小さな種は存在しないが,極端に大きい種は少数存在する。体サイズの大型化は,方向性選択による進化の結果だと考えられがちである。しかし、中立な形質であっても,ランダムな遺伝的浮動による進化が起こる。一般的に,体サイズが進化するときには,そのサイズに対して一定の比率で変化していくと想定されている。より現実的には,進化的変化は変異の大きさに依存すると考えられ,種内変異の大きさは体サイズに応じて変化する傾向にある。これらの場合,体サイズが大きくなるにつれて絶対的な変化量が大きくなるため,ランダムな浮動の結果として,右に裾を長く引いた頻度分布が形成されると期待される。それゆえ,極端に大きな種が存在していても,種間変異は中立進化のみで説明される可能性がある。
大きな種の存在が中立進化と方向性選択のいずれの結果なのかを識別するために,ネコ科に見られる体サイズの種間差を説明する進化プロセスを推定した。ネコ科の体サイズには大きな種間変異があり,イエネコなどの平均体重10kg以下の種が多数を占める一方,トラおよびライオンのように約200kgにも及ぶ種が存在する。表現型進化のシミュレーションを用いた系統種間比較法(Kutsukake & Innan, 2013, Evolution)によって,クレード特異的に働く方向性選択の強さを評価した。平均体重と分散のデータから両者の関係を推定し,進化1回あたりの体重の変化が変異の大きさに比例するようにスケールを変換した。この手法によって,ネコ科の大型種の進化に方向性選択が作用したかどうかを検証した。