| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-213 (Poster presentation)
宿主‐捕食寄生者系は共進化・軍拡競争に関する代表的な研究対象である.捕食寄生では寄生が成功すると宿主は殺されてしまうため,宿主は寄生者に対する抵抗性を進化させると考えられるが,寄生率が高いにもかかわらず寄生者に対する抵抗性を持たない宿主も多い.これは,寄生者に対する抵抗性にはコストがあり,抵抗性の獲得が抑制されている可能性を示唆している.
捕食寄生蜂Leptopilina victoriaeはショウジョウバエ幼虫の体内に産卵し,寄生蜂の幼虫は宿主を捕食して成長し成虫となる.寄生蜂に対して抵抗性を持つショウジョウバエは,寄生蜂に寄生されても生き残ることができる.フタクシショウジョウバエDrosophila bipectinataのL. victoriae KK(コタ・キナバル系統)に対する抵抗性には地理変異があり,インドネシアのボゴール系統,マレーシアのコタ・キナバル系統は抵抗性を持つが,西表島系統は抵抗性を持たない.
本研究では,これらフタクシショウジョウバエ3系統をかけ合わせた母集団を作成し,L. victoriae KKに対する抵抗性を持つ系統を選抜した.母集団の抵抗性は約15%であったが,抵抗性選抜系統では 4世代で80%以上が抵抗性を示すようになった.そこで,抵抗性選抜系統とコントロール系統の生活史形質を比較したところ,選抜系統で雌の寿命の短縮と雌雄の高温耐性の低下がみられた.これらの形質は抵抗性獲得のコストであると考えられる.また,AFLP法による遺伝子多型解析を行い、抵抗性選抜系統に特異的なAFLP断片を発見した.