| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-214 (Poster presentation)
日本にはScolopendra属のアオズムカデ(S. subspinipes japonica)とトビズムカデ(S. subspinipes mutilans)という2亜種が広く分布している。これら2亜種はしばしば共存しており、伊豆諸島では両亜種が共存する島と単独で分布する島がある。本研究では、これら2亜種の関係を明らかにするため、ミトコンドリアDNAに基づく系統解析を行うとともに、両亜種間の形態的差異を調査した。伊豆諸島において、伊豆大島、式根島、新島、神津島では両亜種が、三宅島、御蔵島、八丈島ではアオズムカデのみが採集された。トビズムカデはアオズムカデより大きくなり、相対的に口器が大きい。体サイズで比べると、単独で生息する八丈島のアオズムカデは、トビズムカデと同所的に生息する島のアオズムカデより大きい傾向があった(形質置換の可能性)。一方、ミトコンドリアDNA塩基配列(16S, CO1)に基づいた分子系統解析の結果、両亜種は完全に2つのグループに分けられ、生殖的に分離した別種であると考えられた。関東地方から御蔵島までのアオズムカデは一つの遺伝集団を形成していたが、八丈島のアオズムカデには、この御蔵島までの遺伝集団の他に、琉球列島の遺伝集団が混ざっていることが明らかになった。自然林では前者が、人の居住域では後者が生息しており、琉球列島タイプのものは最近になって(人為的に)移入したと推定された。八丈島のアオズムカデは、他の伊豆諸島のものより大型であることは、琉球列島の遺伝集団のものが大型であることに起因していた。伊豆諸島の本来のアオズムカデだけを比べると、アオズムカデ単独集団とトビズムカデと同所的に生息する集団の間に体サイズの差異はなかった。