| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-218 (Poster presentation)
カンボジアは国土の58%が森林で覆われており、低地熱帯林が現存しているという点で生物多様性のホットスポットである。しかしながら、カンボジアの森林植物相は、ほとんど研究がなされておらず、種同定に基づく森林組成に関する研究を行う事が難しい。例えば、Kao and Iida (2006)では80種が未同定のままであり、Top et al. (2009)では243種の内36%(88種)が未同定のまま解析されている。このような状況下で近年、違法伐採が増加しており森林の群集組成が変化している。本研究では、12年間で4回の計測が行われている32箇所のパーマネントプロットにおいて、DNA barcodingによる種同定を行い、群衆系統関係に対し違法伐採がどのような影響を与えるのかを検証した。プロットに生育する樹木から603サンプルを収集し、rbcLとmatK領域の配列を決定した。BLAST検索の結果に基づき、主要なherbariumで67科322種を同定した。群衆系統解析のための系統推定は、ベイズ法を用いた。予測されたとおり、種多様性、系統的多様性は違法伐採により急激に減少していた。また、違法伐採により群集の組成は、系統的な中立性からずれ系統的に多様化する事がわかった。そして、群集間の系統的関係を調べると、違法伐採により常緑林プロットが落葉乾燥林に近くなることがわかった。これらの事は、長い歴史の中で安定的に維持されてきた群集組成が、違法伐採により急激に変化させられたことを示唆する。