| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-221 (Poster presentation)
ユスリカ幼虫は水界生態系における主要な構成員であるにもかかわらず、形態による同定の困難さから、ユスリカ科として一括されるか属レベルでの議論がほとんどであり、精度が高い群集解析の手段がなかった。しかし、近年、種の同定にDNAバーコーディングを用いた研究の成果が続々と発表されるようになっており、ユスリカ幼虫を種レベルで同定する道が開かれつつある。
我々は、昨年度からユスリカのDNAバーコーディング(チトクロームcオキシダーゼI領域)を利用した種同定法の研究を行っている。その結果、種の同定におけるDNAバーコーディングの有用性が明らかになるとともに、注意すべき事柄も見つかった。本報告ではこれらについて述べる。現時点で明らかになっている主な事柄は以下に列挙するとおりである。
1)形態による同定と塩基配列から導かれる系統は大部分で一致した。2)Chironomus属およびTanypus属で形態により1種と同定された標本から、大きく異なる複数の塩基配列が得られた。特に、C. nipponensisについては低地産のものと高地産のもので塩基配列が異なっていた。3)DNA塩基配列データベースと照合した結果、誤同定と思われる登録が見られた。
なお、塩基配列から種を同定するために必用となる種内・種間変異の境界の検出やより安価な種判別法への応用については、本大会の別のポスターで報告される。