| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-222 (Poster presentation)

DNAバーコーディングを適用したユスリカ科昆虫の多様性の研究.(2) ユスリカ亜科Chironomus 属におけるCOI塩基配列の種内・種間変異

*大林夏湖,今藤夏子,上野隆平,玉置雅紀,高村健二(国立環境研・生物)

双翅目ユスリカ科は淡水無脊椎動物の中で最も多様な科の1つで、全世界で1万種以上の種が記載されている。ユスリカ類は、生活史の大半を水中ですごし、幼虫は多様な水質環境に生息し、重金属耐性や貧酸素耐性等を持つ種もいることから、水質の環境指標生物としても利用されてきた。一方、種同定は雄成虫の形態分類により行われ、種固有の形態的特徴の乏しい幼虫・雌成虫では種レベルの同定に限界がある。そのため、雄成虫のDNA情報が蓄積されれば、幼虫・雌成虫のDNA情報からも種同定が可能になり、水質指標生物としての有用性も高くなる。これにはまず、雄成虫の形態分類による種同定と当該種のDNA配列情報の蓄積が必須である。本研究では、種同定した雄成虫のCOI領域DNA情報を蓄積、DNAバーコーディングにより、配列情報から幼虫・雌成虫の種同定を可能とすることを目的とし、Kimura 2 parameter(K2P)modelを用いた雄成虫の平均遺伝的分岐度を求め、種内・種間変異の解析を行った。本州に分布するChironomus属7種の平均遺伝的分岐度は、種内で2.6%、種間で15.8%であり、両者の頻度分布は重複せず、10%より大きい種間変異を示す場合、別種とみなすことが可能であると考えられた。次に、DNA配列データーベース情報を用い、国内外のChironomus属50種で解析した結果、平均遺伝的分岐度は、種内で2.0%、種間は15.0%となり、国内の平均値と同程度を示した。しかし、平均遺伝的分岐度の頻度分布は、種間と種内について重複し、明確な分岐度の閾値は定義できなかった。


日本生態学会