| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-224 (Poster presentation)

ボルネオ島における焼き畑後の森林遷移と生物多様性の回復過程

*高野(竹中)宏平(東北大), 市岡孝朗(京大), 中川弥智子(名古屋大), 岸本圭子(東大), 山下聡(森林総研), 徳本雄史(名古屋大), 福田大介, 鴨井環(愛媛大), 加藤裕美(早稲田大), 永益英敏(京大), 市川昌広(高知大), 百瀬邦泰(愛媛大), 中静透(東北大), 酒井章子(地球研)

森林の減少や劣化に伴う生物多様性の減少については多くの研究があるが、人為攪乱後の森林遷移と多様性の回復過程に関する研究は少ない。本研究では、低地熱帯域における焼き畑後の森林遷移に着目し、1)焼き畑放棄から3年未満、2) 5-13年後、3) 20-60年後の休閑林、4)国立公園内の原生林の調査区を設置して生物多様性を比較した。多孔菌類・林縁性チョウ類・アリ・腐朽材利用甲虫では焼き畑放棄後の森林遷移に伴って種多様性の回復が観察されたが、焼き畑放棄後20-60年後の森林においても、その種多様性は原生林に比べておおよそ2/3以下に留まっていた。このことは、人為攪乱後の森林遷移に伴って種多様性が回復する生物群においても、原生林のレベルまで多様性が回復するにはかなりの時間がかかることを示唆している。さらに林縁性チョウ類・腐朽材利用甲虫においては、原生林からの距離が種多様性に対して有意な負の効果を持っていた。このことから、森林の回復程度だけでなく、ソース個体群としての広域原生林の重要性が示唆された。一方で、樹木・小型哺乳類・植食性コガネムシなどでは、森林遷移に伴った種多様性の上昇は見られなかった。今回の調査区は5000m2以下と小さく、哺乳類や飛翔性甲虫など移動性の高い分類群は土地被覆の効果をあまり受けなかった可能性がある。各調査地における環境指標(樹木種数・合計胸高断面積・土壌水分量・開空度など)は互いに相関しているケースが多く分離は簡単ではないが、どのような環境要因が各生物分類群にとって重要であるかを今後検討していく必要がある。


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