| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-225 (Poster presentation)
生物多様性と生態系機能の関係については、草本植物の一次生産を対象として多くの研究がなされてきた。森林生態系における一次生産は、炭素の吸収、蓄積に関わる重要な機能であるが、その樹木の多様性との関係についての研究は未だ少なく、特に天然林における長期データの蓄積が待たれている。東京大学附属演習林、生態水文学研究所が所有する愛知県の研究林(赤津、穴の宮、犬山)では、2000年および2009年に20m×20mの生態系プロット32か所において、全ての木本の胸高直径と樹高が記録されている。本研究では、この毎木調査のデータを用い、暖温帯の天然林において、樹木の多様性が材積変化に与える影響について検証した。調査対象地における樹種は全プロットで64種、各プロットでは8から26種確認され、Simpsonの多様度指数は0.73から0.93であった。また、密度は1200~3500 本/ha(2277±559; mean±SD)、平均胸高直径は8.42~15.31 cm (11.25±1.40)、胸高断面積は15.3~40.4 m2/ha(27.6±6.96)であった。各調査年における胸高直径と樹高から総材積を計算し、10年間の年平均生長速度を算定したところ、各プロットにおける平均値は-7.83~9.34 m3/yr/ha (1.86±3.61)であった。各プロットの生長速度を目的変数とし、森林の樹木多様性(樹種、胸高直径等)、地形(傾斜角、斜面方位、標高等)、地質等を説明変数としたモデルを用いて変数選択を行い、樹木多様性が生産に与える影響を検証した結果を報告する。また、その要因を解明するため、樹種ごとの生態的特性(成長速度、樹高等)を考慮した解析を行う。