| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-229 (Poster presentation)
火入れや採草など、人の管理により維持されてきた半自然草原は、多様な草原性生物が生育する環境である。近年、農村地域のライフスタイルの変化に伴う草原自体の利用価値の低下や管理者の高齢化によって、草原管理の放棄・簡略化(管理頻度の変化)が進行している。これまで管理頻度の変化に伴う、植生高や土壌状態などの環境の変化が植物の多様性を減少させるとされてきたが、多様性の減少メカニズムについては十分には解明されていない。
本研究では、木曽馬の産地として半自然草原を維持してきた長野県開田高原を調査地とし、管理の放棄や簡略化に伴う環境の変化が植物多様性を減少させているという仮説を検証することを目的としてきた。昨年までの調査より、管理頻度の変化に伴う植生高の変化が、多様性の減少と関係していることが明らかとなった。今回は、植生高の変化が植物の繁殖を制限することにより多様性の減少を加速させているのではないか?との仮説をたて検証を行った。採草のため伝統的管理(火入れと採草を二年に一度両方行う)が行われている草地と、毎年火入れのみ・草刈りのみ行われている草地、管理が放棄された草地の4つの管理頻度が異なる草地タイプにおいて、植生高と開花種数を5〜10月に調査し、管理頻度の変化による植生高の変化とそれに伴う開花種数の減少について解析を行った。
調査の結果、1. 伝統的管理がなされる草地で開花種数が最も高い。2. 夏以降、草刈り頻度に応じて植生高は減少。3. 植生高の低い(高い)所では、開花植物高が高い(低い)種の開花が制限されることがわかった。各月において、伝統的な二年に一度の管理頻度である草地の植生高は、開花種数が最大となる植生高と一致しており、他の管理では植生高が高く、または低くなりすぎることにより、開花が制限されることで多様性が減少していることが示唆された。