| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-234 (Poster presentation)

エゾシカCervus nippon yesoensisの長期高密度化が食糞性コガネムシの多様性にどのような影響を与えるか?―高密度地域洞爺湖中島と湖畔の森林を比較して―

*赤羽俊亮(酪農学園大学・野生動物),日野貴文(酪農学園大学・野生動物),吉田剛司(酪農学園大学・野生動物)

北海道虻田郡洞爺湖町に位置する洞爺湖中島では,エゾシカの個体数増加により島内の植生や他の動物種が深刻な影響を受けている.中島は,閉鎖空間であるため,エゾシカの高密度状態が長期間続いている特異な環境である.獣糞を餌資源とする食糞性コガネムシ(以下,糞虫)は森林変化の指標生物として用いられている.本研究では,エゾシカの長期高密度化による糞虫の個体数や多様性に与える影響を検証するために,シカの高密度化が長期間続いている洞爺湖中島とシカ低密度地域である洞爺湖湖畔の森林内の糞虫相を比較した.

調査地点を中島と湖畔の林内にそれぞれ3地点,計6地点設定し,2012年6~10月に月1回調査した.採集には早川式トラップを用い,ベイトとなる牛糞は300gとした.採集した糞虫は種同定し,種別に個体数を計数しまた,中島と湖畔の多様度を比較するために,地点毎の種数,Shannonの多様度指数H’を算出した.さらに,群集組成を比較するためにBray-Curtisの類似度指数を求めた.調査の結果,中島では有意に個体数が多く(P<0.001)採集された.一方,多様度指数H’の値に関しては,有意な差は見られなかった.NMDSで群集組成を解析した結果,中島はマエカドコエンマコガネとマグソコガネ属2種,湖畔はセンチコガネによって特徴づけられた.そして,Bray-Curtisの類似度指数を用いた種組成の比較から,中島と湖畔で有意に異なっていた(p<0.01).以上から,エゾシカの長期高密度化により洞爺湖中島では,餌である糞の供給量が多いため糞虫の個体数が多く,さらに糞供給量と下層植生衰退のため群集組成が異なることが示唆された.


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