| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-236 (Poster presentation)
環境フィルタリングなどの群集集合プロセスにより機能的多様性 (FD)の不均一な空間分布パターンが生じると考えられている。環境フィルタリングとは、「群集形成には局所環境が重要となるため、類似した戦略を持つ生物が近くに分布した結果、空間的に近い生物同士の機能形質は似た値をとる」という考え方である。したがって、環境フィルタリングによりアルファFD(群集内のFD)は減少し、ベータFD(群集間のFD)は増加することが期待される。しかし、これまでベータFDによる環境フィルタリングの検出能力を統計的に検証した研究はなかった。そこで本研究では「ガンマFD(種プール全体の多様性)に占めるアルファFDとベータFDの割合の比較」と「ベータFDの期待値と観察値の比較」という2つの視点から、 シミュレーションによって作成した群集に対して、種の相対頻度を含まないFD (FDD)と含むFD (Rao)の2つの指標の環境フィルタリング検出能力を検証した。特に以下の3つに状況での検出力の違いに着目した。(1)種の相対頻度と形質に相関ある場合の検出力。 (2)扱う形質の数の違いによる検出力。(3)種プールに満たない種数での検出力。その結果、種の相対頻度と形質に相関がある場合、Raoでは散布制限と環境フィルタリングが作り出すベータFDの大きさを区別することができなかった。また扱う形質が増えると、どちらの指標でも環境フィルタリングの検出力が減少した。実際の種プールに足りていない局所群集を用いても検出力に大きな影響はでなかったが、局所群集の種数が少ないと検出力が減少した。以上の結果に加えてベータFDの期待値と観察値の比較から、生態学的な意義のあるベータFDのはかり方を議論する。