| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-238 (Poster presentation)
ヴェトナム国内で最大級の熱帯雨林を保有するカッティエン国立公園は,未だ国立公園内の生物多様性評価などが体系的には行われておらず,特に多様な種が生息していると予測されているネズミ科についての詳細な報告はない.そこで,国立公園内の合計17箇所において2011~2012年の間(のべ42日間)ネズミ科の捕獲調査を実施し,DNAバーコーディング法によって種同定及び餌資源推定を行った.
捕獲された33個体は,ミトコンドリアDNAのCOI及びCytbから,シナシロハラネズミNiviventer confucianus,ヒマラヤクリゲネズミN.fulvescens,クマネズミRattus rattus,ナンヨウネズミR. exulans,アカスンダドゲネズミMaxomys suriferの3属5種に同定された.
また,餌資源推定には胃腸内容物より全DNAを抽出し,植物性については葉緑体DNAのrbcL及び動物性についてはCOIより推定した.植物由来はツルアカメガシワ(トウダイグサ科),キデナンツス属一種 (サガリバナ科),ハマビワ属一種(クスノキ科),アメリカハマグルマ(キク科),コウトウマメモドキ属一種(マメモドキ科),ウスバヤブマメ(マメ科),ケシ科の7種が,動物由来としてシロアリ科,ミドリゼミ属(セミ科),ウデムシ目の3種が推定された.
以上のように,DNAバーコーディング法は種同定や餌資源推定に有益なツールで,今後はネズミ科だけではなく哺乳類相保全のための熱帯林保全指針として活用できることが期待できた.