| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-239 (Poster presentation)

環境DNAを用いてタイ肝吸虫の生態を探る

*源利文(神戸大院・人間発達環境),中貴文,船津耕平(龍谷大・理工),神松幸弘(京都大・生態研),川端善一郎(地球研),丸山敦(龍谷大・理工),Tiengkham Pongvongsa(ラオス国保健省),門司和彦(地球研)

タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)による感染症はタイ、カンボジア、ラオスなどの東南アジア各国に広く分布し、その感染者数は1000万人近いと見積もられている。タイ肝吸虫のライフサイクルは、(1)感染者(感染動物)の体内から糞便を介して環境中に卵が排出され、(2)第一中間宿主のBithynia属の貝の体内でセルカリア幼生となり、(3)第二中間宿主のコイ科を中心とした魚類に感染し、メタセルカリア幼生となり、(4)魚類を生食する終宿主(主にヒトを始めとする哺乳類)に感染するといったものである。感染者の体内で成虫になると、胆管に入り、胆管がんの原因となる。このような複雑な生態を示す寄生虫の自然環境中における生態は十分には解明されていない。そこで、我々は、ラオス国サワンナケート県のチャンポン川流域において、近年急速に発展しつつある環境DNA(eDNA)技術を用いて、本感染症にかかわる生物の生態を明らかにするための研究を行なっている。eDNA技術を適用することで、水サンプルのみを用いて、本感染症にかかわる4者(ヒト、魚、貝、吸虫)の生態を解明できる可能性がある。開発途上国での遺伝子を用いた野外研究においては、一般に現地でのサンプル保存や解析に困難があるが、我々は電源の取れない場所におけるeDNA解析法を開発し(中ほか、本大会)、この地方によく見られるシルトを多く含む水からのDNA抽出に成功したほか、魚類DNAの増幅にも成功した。本発表ではここまでの成果を概説し、今後の研究展開について議論したい。


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