| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-244 (Poster presentation)

二つの空間スケールでみたアフリカ熱帯雨林における食肉目の棲み分け

*中島啓裕(京大・理)

アフリカの熱帯雨林には、ヒョウをはじめとする多くの食肉目動物が、比較的高い密度で同所的に生息している。先行研究によって、これら複数種の共存は、体サイズ依存的な食性ニッチの分割によって可能になっていることが示唆されている。しかし、特に多様性の高い中央アフリカの熱帯雨林では、食性が共通した同サイズの種が共存することも多く、これらの種の共存機構については十分明らかにはされていない。本研究では、中央アフリカに位置するガボン共和国ムカラバ国立公園において、カメラトラップ(ビデオトラップ)約150台を用いて調査を行い、種間で空間的住み分けが生じているか検討することとした。ムカラバには、低地熱帯雨林、中標高山地林、湿地林、サバンナなど多様な環境が比較的狭い地域に含まれており、ネコ2種、ジャコウネコ1種、マングース4種、ジェネット2種、カワウソ1種の生息が確認されている。調査の結果、重複した食性を持つとされる同サイズの近縁種(マングースとジェネット)は、明瞭な空間的住み分けを行っていることが明らかにされた。ジェネットとマングースそれぞれ1種は、サバンナ及びその周辺の森林に対する先行性が高く、マングース1種は、湿地林においてのみ見られた。残りのマングース2種、ジェネット1種は、森林内部で広く見られた。興味深いことに、それら森林性マングース2種は、利用する微小環境が異なることが示唆された。すなわち、一方の種は比較的開けたマルミミゾウの通り道で頻繁に撮影されるのに対し、もう一方の種は藪がちな環境でよく撮影された。マングース2種の微小環境の使い分けは、ゾウという巨大な生態系エンジニアの存在に依拠しているともいえ、熱帯雨林のもつ複雑な種間関係を象徴していると言える。発表では、撮影されたビデオを紹介しながら、各種の生息地選好性と種間での空間的棲み分けの可能性について議論したい。


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