| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-245 (Poster presentation)

大津波は海岸生物にどのような影響を与えたのか:仙台湾沿岸のウミニナ類の生息状況の変化

*三浦収,高知大学総合研究センター

東北太平洋沿岸の地形は変化に富み、干潮時の湾奥部や河口には多くの干潟が現れる。干潟は海と陸とが交わる場所であり、陸から供給される豊かな栄養により多種多様な生物の重要な生息場所となっている。東日本大震災による大津波は、これら干潟生態系に甚大な影響を及ぼしたと考えられ、その生物群集への影響について科学的な影響評価が待たれている。

本研究では、干潟に生息する様々な生物の中でも特に高密度で生息する巻貝のホソウミニナとウミニナを対象に津波の影響評価の研究を行った。福島県から宮城県にかけての5つの干潟(松川浦・鳥の海・潜ヶ浦・万石浦・長面浦)で生態調査を行ったところ、松川浦以外の干潟ではウミニナ類の密度が大幅に減少していることが明らかとなった。特に、鳥の海・潜ヶ浦・長面浦の調査地点では、ウミニナ・ホソウミニナ共に殆どいなくなっていた。同様に万石浦の調査地点では、ホソウミニナの密度が以前と比べて約40分の1にまで減少していた。それに対して松川浦の調査地点ではウミニナ・ホソウミニナ共に多数生息しており、ホソウミニナについては津波前の生息密度と比べても有意な減少は見られなかった。

調査地点ごとに津波による被害に違いがあるのは何故だろうか?ウミニナ類の被害が大きかった鳥の海・潜ヶ浦・長面浦では5m以上の津波が観測され、調査地点周辺のインフラ設備も大きく破損していた。それに対して万石浦や松川浦では、場所によっては大きな津波が打ち寄せたものの、湾の地形や津波の向きなどの影響により、調査地点は大きな被害を免れていた。これらのことから、干潟を囲む陸地の地形や津波の進行方向によって干潟生物の被害の状況が大きく異なることが明らかとなった。


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