| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-265 (Poster presentation)
太平洋の縁海である日本海は、特徴的な潮汐を示す。例えば、青森県の太平洋の潮位差は1.5mほどあるのに対して、日本海では40cmほどである。また、日本海では潮位の季節変動が大きく、春の満潮時の汀線が秋の干潮時の汀線よりも低くなることもある。このような日本海沿岸の特徴的な環境は、潮間帯生物の分布に大きな影響を与えていることが考えられる。本研究の目的は北日本海沿岸の潮間帯生物群集の特徴を明らかにすることである。
調査は2012年5月~8月に、青森県の日本海沿岸と津軽海峡の開放岩礁性海岸で行った。岩礁の斜面に、海水面から岩礁頂方向に2本のラインを引いた。ライン上の海藻の分布上限を起点とし、下は20cmあるいは30cmまで、上は岩礁頂、あるいはアラレタマキビの分布上限までを調査範囲とした。ラインに沿って縦10cm、横30cmのコドラートを順次設定してその中に出現した表生底生動物の個体数を記録した。
潮間帯群集は、ほとんどの地点で明確な帯状分布を示した。潮間帯下部からその下の海藻帯にはムラサキインコガイの幼稚体とヨロイイソギンチャクが見られた。潮間帯下部から中部にはベッコウガサとコガモガイ類が主に出現した。その上にはイワフジツボが疎らに見られた。潮間帯上部から潮上帯にかけてはアラレタマキビが出現した。
固着性のムラサキインコガイは個体サイズから、青森県日本海沿岸では着底後生残できないことが明らかになった。潮位が周年変動する日本海では、潮位の変動に合わせて移動できるカサガイ類が潮間帯で優占することが示唆された。また、群集構造は矢島ら(1978,1980,1984)の北陸以北の結果とおおむね一致していたことから、日本海北部の岩礁性潮間帯表生底生動物相は、緯度勾配よりも、対馬海流の影響を大きく受けていると考えられた。