| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-300 (Poster presentation)
ニューカレドニアは世界で最も固有種の多い地域の一つであり,それと同時に多くの危惧種が生息する地域である.そのため,動物の生息環境中の利用資源を記載し,資源の重要性を評価することは生態学的な基礎情報の整備・保護保全のために重要である.鳥類ではこれまで重要な資源として餌と営巣環境が着目されてきたが,熱帯には明瞭な乾季があり,多くの鳥類は渇水期に繁殖を行うことから,地表に停留する水が繁殖期の資源として重要である可能性がある.そこで本研究ではニューカレドニアのParc des Grandes Fougèresにおいて,鳥類の繁殖期インターバルカメラを用いて鳥類の水場の利用頻度および水場での行動を記録し,鳥類にとっての水場の重要性を調査した.
その結果,1340時間の撮影によって746回の鳥類の訪問を記録した.水場への訪問頻度には鳥類の採餌物や体サイズは影響せず,調査地で個体数の多い鳥種が水場を頻繁に訪れていた.また,水場の利用目的の97%が水浴びであり,給水は3%のみであった.さらに,給水を行ったのは種子を採餌するハト類やフィンチ類とカレドニアガラスに限られており,ほとんどの鳥種は水を飲むことがなかった.採餌物に水分が少ない種子食鳥のみが餌から水を摂取できないために給水するが,水分の多く含まれる昆虫や果実,花の蜜を採餌する鳥類は水場を利用して給水を行わずとも餌から水分を摂取できると考えられる.また,すべての鳥種の訪問頻度が調査地での個体数と相関していたことから,水浴びの必要性には鳥種ごとの差が小さいと考えられた.
結論として,乾季に繁殖を行う熱帯の鳥類にとって水は水浴びのために重要な資源であり,とくに水を特に必要とする鳥種は種子食鳥にとっては必須の資源であることが示唆された.