| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-306 (Poster presentation)
ツチガエルは「捕まえると臭い」ことで知られ、この特有のニオイは本種の皮膚腺から出る分泌物に由来する。この分泌物はヘビがエサを込むことを妨げる効果があり、分泌物が口内に付着したヘビは口を大きく開ける特有の行動を見せる。こうしたヘビの捕食行動に与える分泌物の効果は、ヘビが本種を咬むなどして分泌物と接触した際に生じることがわかっている。
一方、咬みつきによる接触が無くても、ヘビが本種のニオイを知覚するだけで捕食を止める場合がある。たとえば、野外で捕獲したヘビに本種を与えたとき、ニオイを確かめるだけで全く咬みつかない個体が観察された。こうしたニオイの効果は個体によって差がある。我々は、個体間の差が見られるのは、ヘビが本種と接触した経験を通して本種が食べられない餌であることを学習してニオイだけに反応するため、それまでの遭遇経験の違いによる学習の程度の差によると考えた。だが、ヘビが接触の経験を通してニオイに対する反応を変えることは明らかでなかった。
そこで今回は、ヘビを本種と接触させ、接触経験の前後でニオイに対する反応が変化するかを調べた。本種のニオイがする餌とコントロールのヌマガエルのニオイがする餌を与えたときの咬みつきの有無を観察した。その後、生きたツチガエルまたはヌマガエルと接触させた後に、再びニオイがする餌に対する反応を観察した。結果、ツチガエルを経験させた個体はニオイを嗅ぐだけで捕食を止まる割合が高く、ヌマガエルを経験した場合は経験による変化は見られなかった。したがって、ツチガエルと接触した経験によってヘビは本種のニオイを学習し、ニオイを感知するだけで捕食を止めることが示唆された。