| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-312 (Poster presentation)

丸形局所選択モデルを利用したニホンザルの生息地選択評価

*山田彩(近中四農研),清田雅史,岡村寛(国際水研),室山泰之(兵庫県立大)

動物の生息地選択解析において、行動圏全体をavailabilityとすると、利用箇所の独立性の問題から一般的な資源選択性解析ではバイアスを生じる可能性がある。一方、移動経路の近傍をavailabilityとした局所選択モデルも考えられるが、移動経路設定自体があるレベルの選択を表す可能性がある。そこでニホンザル農作物加害群の生息地選択を題材とし、異なる空間スケールでの選択性と食物豊度の関係を検証した。

2003年1月から11月にかけて、三重県名張市のサル群の利用箇所を1時間毎に記録した。同時に森における食物豊度の指標としてアカマツ林・コナラ林・シイ林・スギヒノキ林の基底面積を月毎に求め、また集落における食物豊度の指標として田・畑面積と果樹本数を月毎に求めた。サルの生息地タイプを4植生と集落、農地の周辺林の6種に分け、2つの空間スケールでの生息地選択解析:i) 行動圏全体をavailability、サルの移動軌跡に沿った丸形圏内をusageとしたManlyの選択指数αの算出; ii) サルの各出現位置の周囲の丸形圏内をavailability、次の出現位置をusageとした局所選択モデルによる選択指数wの推定 を行い、それらと食物豊度との関係を解析した。

その結果、2つのモデルでは生息地選択に影響を与える要因の傾向が異っていた。したがって、生息地選択について議論する際には動物にとってのavailabilityとusageの空間スケールについて十分に吟味する必要性が示唆された。


日本生態学会