| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-314 (Poster presentation)

GPS-ARGOS首輪を用いたツキノワグマの移動障害と活動パターンの分類

*土光智子(横国大・環情), 陳文波(慶大・政メ),一ノ瀬友博(慶大・環情)

近年、動物の位置をGPSで自動探査し、位置データを蓄積後、アルゴスシステムを用いてそのデータを回収するという装置(以降、GPS-ARGOSと呼ぶ)が実用化された。森林に生息する陸域哺乳類は、現段階においてGPS-ARGOSの装着実例がない。本研究は、GPS-ARGOSから得られる追跡データを用いて、丹沢地域のツキノワグマの移動障害と生態行動を明らかにすることを目的とする。神奈川県の丹沢国定公園内にある宮ヶ瀬湖近辺の広葉樹林帯でツキノワグマ1頭を捕獲し、GPS-ARGOSを装着し、追跡を行い、1ヶ月間のデータが得られた。GISで解析したところ、ツキノワグマは、31回の道路横断、24回の河川横断を行っていた。道路は種類ごとに移動の障害となっている可能性があり、特に幅員は重要な要素であると考察された。国定公園内で取られている車両規制はツキノワグマ保全策として有効なものである。ツキノワグマの渡った河川の構造をフィールド調査で調べたところ、平均値は、川幅3.5m、水深13.4cm、流速0.29m/秒であった。ツキノワグマは、比較的小規模の河川(沢)をよく利用し、頻繁に渡っており、丹沢地域の河川はツキノワグマの移動障害にはなっていないことがわかった。ツキノワグマの位置データから座標値を計算し、座標値ごとにGISデータから環境情報を抽出した。クラスター解析により、以下の4つの行動区分:採餌、休息、移動、マーキング他に分類した。ツキノワグマは、採餌をしている時間が最も長く(57.1%)、続いて休息(37.5%)、移動(3.6%)、マーキング(1.8%)が占めた。


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