| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-316 (Poster presentation)
ホンヤドカリのオスは、産卵間近なメスを掴まえて交尾前ガードするが、ガード中の他のオスからメスを奪うことに消極的だったり、奪ったメスをガードせず放棄する場合がある。この行動の理由を探るために、本研究では、本種のオスがメスの体長や産卵までの日数を基準にして配偶者選択を行うのか、また、過去にガードしていたメスが配偶者選択に及ぼす影響について検証した。
野外でガードペアとなっていた個体を用いて、元のパートナーとは異なる組み合わせで、オスを2匹のメスと出会わせた。5分後にガードしていたメスを記録し(実験1A)、1時間後に同様の組み合わせで同様の操作を行なった(実験1B)。次に2ペアのメスを入れ替える実験を行なった(実験2)。実験終了後は元のペアに戻し、各ペアのメスが産卵するまでの日数と、全個体の体長を記録した。
実験1Aの解析では、オスが大型メスをガードしたか否かを応答変数とし、オスと大型メスの体長差(SLMF)、大型メスと小型メスの体長差(SLFF)、大型メスと小型メスの産卵日差を説明変数の候補とした複数モデル間でAICを比較した。その結果、SLMFとSLFFのモデルが選ばれた。実験1Bでは、オスが1Aと同じメスを選択したか否かを応答変数とし、1Aと同様にモデル選択をしたところ、SLFFのモデルが選ばれた。本種のオスはメスの体長を基準に配偶者選択をしていると考えられる。実験2では、ガードの有無を応答変数とし、元メスの体長、新メスの体長、各メスの産卵までの日数、オスの体長を変数候補にしてモデル選択したところ、元メスの体長と新メスの産卵までの日数を用いたモデルが選ばれた。本種のオスは、直前まで大型メスをガードしていた場合に、新メスのガードよりも元メスの探索を優先するのかもしれない。