| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-389 (Poster presentation)
生物を保護するためには、保護対象種の利用場所を正確に把握することが必要である。特に、繁殖期はコロニーや巣の場所だけでなく、採餌利用場所も含めた包括的な把握が重要になる。だが、海鳥などの広域で採餌する生物や、海域など直接観察することが困難な場所を利用する場所ばし生物に関しては、採餌利用域が保護の対象から外れているのが現状である。
本研究では、イギリス沿岸部で繁殖する海鳥を対象に、包括的な利用場所を推定する手法を検討した。国管理データベースの洋上調査による個体数カウントデータを目的変数とし、海水温や海底質などの環境データを説明変数として使用し、一般化線形混合モデル(GLMM)により解析をした。使用データは、調査手法や調査範囲が異なっていたり、データがない海域もあったため、ArcGISでグリッドマップを作成し、セルサイズに合わせて全データの解像度を統一した。
解析対象の海鳥は、異なる採餌方法(潜水・水面)、コロニーからの飛翔距離により選出した。また、セルサイズ、海域を変えて解析をすることで推定手法の検討をした。その結果、対象種により大きく異なる利用場所が示され、同種であってもセルサイズ・対象海域によって結果が変わった。さらに、調査が実施されていない海域でも採餌に利用されていることが示唆された。
このことから、正確な利用場所の推定には、対象種にあわせた範囲や解像度の選択が重要であるといえる。本手法は、限られたデータ、異なる手法によるデータで包括的な利用場所の推定を可能にした。これは今後増えるであろう海洋保護区の設置検討、海域での環境影響評価の手法として活かすことができると考えられる。