| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-391 (Poster presentation)

地表性昆虫を用いたビオトープの評価

*増田理子(名工大・社会工学),榊原里奈(名工大・社会開発),杉村なお(名工大・都市社会)

庄内川水系に設置された二つのビオトープがどのように自然再生するのかについての評価を地表性昆虫を用いて行った.

平成22年に行った調査ではビオトープ建設後2年経過したビオトープ,1年経過したビオトープについての調査研究を行った結果,建設後の期間によって地表性昆虫の回復度が違うことが示され,河川敷における生態系の評価に地表性昆虫を用いることが適切であることが示唆された.

平成23年に庄内川水系では大出水があり,ビオトープ内にも大きな攪乱が引き起こされた.その結果植生がはぎ取られ土砂が堆積し広い面積の裸地が形成された.そこで平成24年春から地表性昆虫の出現の経時的な調査を行うことにより,河川の生態系の回復の状況についての検討を行った.

平成24年4月から11月にかけて,庄内川(清須市)右岸において草原,湿地,河畔林の三つの植生,および矢田川(名古屋市北区)右岸の草原および河畔林の二つの植生において調査を行った.調査にはピットフォールトラップを用い,各色成句分ごとに10個のトラップを毎週24時間設置し,回収を行い,捕獲された種の同定計数を行った.

その結果以下のような事が示唆された.4月上旬には裸地が多く形成されており,地表植生がほとんど見られなかった時期の地表性昆虫相は非常に貧弱であり,ほとんど多様性が認められなかった.これは平成23年秋の出水が植物相および昆虫相に非常に大きなダメージを与えたことを示していると考えられた.しかし,その後植生が回復するにつれて,移動性の地表性昆虫が増加し,個体数も増加した.春の出現ピークにはほとんど多様性は認められなかったが,夏の出現ピークにおいては平成22年の調査と同様の個体数が確認できた.しかし平成22年に認められたような種の多様性は確認できず,植生が回復した直後には地表性昆虫の回復はまだ行われていないことが示された.


日本生態学会