| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-393 (Poster presentation)

ブルーギル(Lepomis macrochirus)の個体群モデルを用いた駆除対策への示唆

*岩崎雄一(東工大・理工),秋田鉄也(総研大・先導研),加茂将史(産総研・安全科学)

外来種管理において,実施する対策が対象生物の個体数低減または根絶にどの程度有効かについての情報を得ることは有用である。本研究では,全国各地で生息が確認されている外来魚ブルーギルを対象に,米国Hyco湖で構築された個体群モデルを利用し,卵,未成魚,成魚の駆除割合がブルーギルの平衡個体数に及ぼす影響を評価した。卵,未成魚,成魚の駆除を個別に実施した場合に平衡個体数を1未満にするには, 年あたり84~92%の高い駆除割合が必要であった。一方,卵を一定の割合で除去する条件下において,成魚または未成魚の駆除を加えることで,個別に駆除対策を実施するよりも少ない駆除割合で根絶に導くことができることが示された(駆除に要する総コストが必ずしも減少するとは限らない点に留意)。さらに,卵及び成魚を個別に駆除する場合それぞれ約80%,60%未満の駆除割合までは平衡個体数が増加し,それを超えると個体数が減少するという一山型の応答を示した。これは本研究で用いた個体群モデルにおいて産卵数と0歳魚の個体数との関係にリッカー型の密度効果を仮定しているためである。したがって,実際に管理を実施する際において,ブルーギル個体群の動態に作用する密度効果の影響を把握・推定することも重要であると考えられる。本研究の結果が日本における現実の駆除事例にどの程度適用できるかは留意が必要であるが,個体群モデルを用いることで複数の駆除対策の効果を予測・比較することができ,より効果的な対策の選択を支援することが可能になるだろう。なお,本研究の結果は,岩崎ら(印刷中,応用生態工学)にまとめられたものである。


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