| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-395 (Poster presentation)

表土剥ぎ取りによる除染作業が水田土壌およびトウキョウダルマガエル幼生の放射能汚染に与える影響

*境 優(農工大・農), 五味高志(農工大・農), 若原妙子(農工大・農), 恩田裕一(筑波大・生命環境)

自然湿地生態系の代替地として注目される水田は、福島県下における主要な景観ユニットである。東日本大震災後、福島県下の水田地帯の広い範囲が福島原発事故により大規模な放射性セシウム汚染に見舞われ、除染作業が行われている。本研究では、表土剥ぎ取り作業(表層0~5 cm)による放射性セシウム除去が、水田土壌とその上に生息するカエル幼生にどのような効果をもたらすのかを調査した。福島県川俣町に位置する2011年6月に除染された除染水田と対照水田を調査地とし、2012年7月に採集した土壌コアサンプルと、カエル幼生(トウキョウダルマガエル)の乾燥重量中のCs-137濃度をそれぞれ測定した。

深度0~20 cmまでの水田土壌の総Cs-137濃度の平均値は、除染水田、対照水田それぞれで、2015, 8028 Bq/kgであった。一方、カエル幼生のCs-137濃度は、それぞれ880 ± 91 (SE)、4500 ±266 Bq/kgであった。カエル幼生のCs-137濃度は、表層土壌(0~5 cm)より高くなっており、食物を介した生物濃縮プロセスが起こっていることが推察された。また、表層土壌とカエル幼生では、それぞれ除染水田のCs-137濃度が対照水田の21, 20%であった。これらの結果は、水田における表土剥ぎによる除染作業が土壌およびカエル幼生に一定の効果をもたらしたことを示している。しかしながら、除染水田における表層土壌のCs-137濃度は、2012年試料採集時では2011年の除染直後と比べ約4.4倍となっていた。以上のことから、水田と同じく汚染された周辺環境(例えば、用水路、集水域)からの放射性セシウムの移動、生物濃縮プロセスのモニタリングの重要性が示唆された。


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