| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-398 (Poster presentation)

生物多様性フットプリント:木材消費国が引き起こす海を越えた森林破壊の影響

*古川拓哉(横国大・環境情報),角谷拓,石濱史子(国環研),Kastner T.(Univ. Klagenfurt),加用千裕(農工大・農),本藤祐樹,松田裕之,金子信博(横国大・環境情報)

人間社会による資源消費は、世界的な生物多様性減少の大きな要因の一つである。経済のグローバル化が進んだことで、資源の生産地と消費地の距離は遠ざかり、その関係も複雑化しているが、資源貿易による国境を越えた生物多様性損失はほとんど明らかにされていない。このため、マクロスケールの資源生産・消費パターンと生物多様性データを直接的に結びつけ、資源貿易が引き起こす生物多様性損失を定量的に評価する必要がある。

そこで、資源消費の環境負荷を評価するエコロジカル・フットプリント(EF)の概念を拡張し、国際貿易による資源流通量を推計し、ある国が消費する資源量を原産国別の生産に必要な土地面積に換算した上で、その国の消費活動によるグローバルな生物多様性インパクトを求める「生物多様性フットプリント(BF)」の枠組みを考案した。本研究では、生物多様性減少の主要因の一つである森林伐採を対象に、木材生産によって生じる生物多様性損失と国境を越えた消費活動の生物多様性への影響を推定した。

結果、国外への木材資源供給によるEFの「輸出」はカナダやロシア、北欧など北方の木材生産国で特に高く、「輸入」は米国、日本、中国、西ヨーロッパ諸国が高かった。一方、国外への木材資源供給にともなう自国内での生物多様性損失、すなわちBFの「輸出」はインドネシアやマダガスカルなど熱帯地域で高く、「輸入」は中国と日本が突出し、米国、韓国、西ヨーロッパ諸国の順に続いた。EFとBFの輸入の順位の変化は、木材輸入量の総量だけでなく、熱帯地域からの輸入量の違いがBFに反映されたためである。


日本生態学会