| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-400 (Poster presentation)

阿蘇東外輪山における樹林の伐採による草原再生に伴う植生の変化

*横川昌史(大阪市立自然博),井上雅仁(三瓶自然館),堤道生(近中四農研),白川勝信(高原の自然館),高橋佳孝(近中四農研),井鷺裕司(京都大・農)

半自然草原は人為的な管理によって維持されてきた二次的な植生であるが、管理放棄や土地利用の転換によって面積が大きく減少している。各地で草原植生の再生の取り組みが行われているものの、植生データに基づく再生の取り組みはまだまだ少なく、基礎的なデータの蓄積が必要である。本研究では、熊本県の阿蘇東外輪山にあるかつて半自然草原であったミズキが優占する樹林を伐採し、毎年の草刈・持ち出しを行う処理を行い、4年間の草原植生の変化を評価した。調査地において12 m×12 mの調査区を2ヶ所設置し、各調査区内に2 m×2 mの植生調査区を9ヶ所設置した。2009年の10月に樹林の伐採を行い、2010年から2012年の10月から12月の間に草刈・持ち出しを行った。2009年から2012年のそれぞれ5月と8月に各植生調査区内の植物の種名と被度・高さを記録した。

樹林の伐採によって種組成が大きく変化し、植生調査区あたりの植物の種数が上昇した。これらの変化は、優占種が入れ替わったことと、草原性の植物が新たに定着したことによるものと考えられた。また、散布特性ごとの相対優占度を評価したところ、風散布植物の優占度が伐採後に急速に増加していたが、重力散布植物の優占度は増加していなかった。これらのことから風散布植物の植生変化への貢献度が大きく、重力散布の草原性植物の定着には時間がかかると考えられた。今回の調査区と周辺の半自然草原の植生データを比べると優占種の相対優占度や種の出現パターンが大きく異なるため、今後も植生が変化していくものと予想された。


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