| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-401 (Poster presentation)

メコン中流域の魚類の移動と寄生虫感染率の変化

*船津耕平,丸山敦,神松幸弘,源利文,門司和彦

近年、公衆衛生分野において、有害生物の被害を生態学的視点から管理する手法が注目され直している(エコヘルス)。我々は、東南アジアを中心に生息し、肝硬変や胆管癌を引き起こすタイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)のリスク管理を目指すプロジェクトの一環として、その第二中間宿主である魚類の季節移動とそれに伴うタイ肝吸虫の分布拡大を把握するために、メコン河中流域の水田地域で調査を行った。タイ肝吸虫は、水田地域の水田、貯水池、用水路に生息するBithynia属巻貝に潜伏し、雨期に大・中河川から遡上する魚類を介して終宿主のヒトに寄生する。そのため、雨季の魚類の分布拡大が、タイ肝吸虫の生活環の維持、および分布拡大に貢献していると考えられる。本報告では、メコン河中流域の支流に流れ込む川に隣接する6つの農村(ラオス、サワンナケート県)の水田、貯水池、用水路で2012年6月(雨季直前)、9月(雨期終盤)に魚類を採取し、種組成、密度、およびタイ肝吸虫の感染率の変化を調べた。魚類は形態による同定を行った後、形態による同定が困難な種、およびDNA配列情報が不足している種については、DNAを抽出してmtDNA、Cyt-b領域のシーケンスに供した。また、吸虫感染を確認するため、胸鰭周辺を顕微鏡下で観察して感染の有無を調べ、陽性の魚体からはDNAを抽出して吸虫の種特定を行った。2012年6月に採取した魚類は39種274個体、9月に採取した魚類は52種744個体であり、雨期になると捕れる魚類の種数、個体数ともに大きく増えた。吸虫のメタセルカリアの感染個体数は、雨季直前(21/274個体)から雨季終盤(45/744個体)と増加したが、感染率そのものは減少した。本発表では種特定の結果と併せて報告し、エコヘルスの視点にたったタイ肝吸虫症の管理法を提案したい。


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