| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-406 (Poster presentation)

異なる森林施業が生物多様性に与える影響

*太田 藍乃,森 章,北川 涼(横浜国大・環境情報)

近年では,これまで日本で多く行われてきた,優れた材木を作るための林業よりも,森林の多面的機能の発揮や木材価格の低迷などの理由により,長伐期や針広混交林施行へと移行を開始している.以前は皆伐が主流だったが,伐採強度や伐採方法(帯状伐採),択伐など新しい人工林の管理方法が検討されている.森林の多面的機能の一つとして,生物の生息地として生物多様性の維持に貢献していることが挙げられる.ヨーロッパでは,間伐割合やその方法がそこに生息する生き物にも配慮した伐採を行う政策が行われているが,日本では施業技術や施業施策に関する十分な検討はまだなされていない.そこで本研究では,森林管理を行う上で,間伐がそこに生息する植物の多様性へどのような影響を与えるのか,メタ解析を行った.

間伐と種数に関して記載された論文を収集し,間伐率と種数の推移などの情報を抽出した.その後,無間伐区に対する多様性の変化率を示す値(Hedges' d)を求め,間伐率と多様性の関係について解析を行った.

その結果,間伐を行った方が何も行わなかった場合と比較して,有意に植物の多様性が上がることが示された.これは,伐採されることにより,光条件が良好になること,生息スペースが増加することなどから特に下層植生など,侵入する種が多くいるからだと考えられる.しかし,間伐率とHedges' dでの分散分析の結果,間伐率強度を上げると多様性は増すが,中規模の間伐がもっともHedges' dの値が大きくなることから,中規模撹乱仮説の傾向が見られた.森林施業を行う上で,どれほどの間伐率,どのような間隔で伐採するのかなど,人と生き物が共存する持続可能な森林管理方法を検討するための礎となると考えられる.


日本生態学会