| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-413 (Poster presentation)

不耕起・草生畑に成立する土壌生物群集の多様性と機能

*金子信博,南谷幸雄,廿楽法,三浦季子,荒井見和(横浜国大環境情報)

近年ようやく、生物多様性が生態系機能を通して生態系サービスの供給に正の効果があることが認められるようになってきた。しかし農業では、以前として農地そのものではなく、まわりの森林などの影響を調べる研究が多く、農地に生息する生物の多様性が持つ効果についての研究は少ない。農地では耕起や施肥、農薬散布といった撹乱が頻繁に生じるので、自然草原や森林に比べると土壌の生物多様性は低い。一方、農地保全を目的として不耕起や省耕起、無施肥や有機農業の採用などさまざまな農法が試されている。不耕起で地上部の雑草を刈り取りによって管理する自然草生・不耕起栽培は、作物の生産量が慣行農法より劣るので、ほとんど普及していないが、土壌への撹乱が最も少ない農法である。一般に農家では処理間の比較ができないので、自然草生・不耕起栽培と慣行農法における土壌生物群集の多様性と機能を比較するために、試験圃場を設定した。処理は、耕起もしくは自然草生・不耕起と、有機肥料の有無の2要因である。長年草地として管理されてきた学内の一部を2009年から耕起し、夏季はダイズ、冬季はコムギを栽培した。2012年6月のコムギ収穫量は、施肥を行った自然草生・不耕起で最も多く、無施肥の自然草生・不耕起で最も少なかった。耕起の開始によって、大型ミミズは生息できなくなったが、不耕起区では30 g/m2を越すミミズが生息していた。節足動物、土壌微生物群集にも耕起の影響が大きかった。表層0-5cmの炭素濃度は3年間の耕起により8%から6%に減少し、2mm以上の耐水性団粒も減少していた。自然草生・不耕起栽培で十分な施肥を行うと、雑草の根バイオマスが多くなり、土壌生物の資源として有効であり、団粒形成を通して土壌炭素濃度が高く維持されていた。


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