| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-415 (Poster presentation)
ワンドとは河道と水面が連結している止水域であり,止水性の水生生物の生息場所,また仔稚魚期の成育場所や増水時の避難場所となる。砂州が発達している京都府木津川には,自然に形成されたワンドが多く見られるが,砂利採取,ダム堆砂,河道掘削等による土砂供給の減少とともにワンドの形状も変化してきている。そこで,本研究では木津川0-25km区間について,地形特性に基づくワンド類型と動物相の対応を調査するとともに,各ワンドの形成される砂州条件を分析することによって,木津川砂州の生態系管理における目標像を提示することを目的とした。
調査の結果,開口部が上流側を向いているか下流側を向いているかによって,砂州頭ワンド,砂州尻ワンドに分けることができた。また,それぞれについて,植生が被覆している割合の高い植生ワンドと水際が開けている裸地ワンドに分類された。各類型の動物相を調査した結果,砂州頭裸地ワンドは,ニゴイの稚魚・カゲロウ目・カワゲラ目,カワヨシノボリなどに,砂州頭植生ワンドは,ヌマチチブ・メダカ・オオクチバス・ブルーギルなどに,砂州尻裸地ワンドは,オイカワ,カマツカなどに,砂州尻植生ワンドは,アメリカザリガニ,ユスリカ科,チビミズムシ,トンボ目などに特徴づけられた。また,増水後には砂州尻ワンドで多くの生物が確認され,避難場所としての価値が示唆された。
砂州頭ワンドの個数は,低水路沿いが低い砂州,比高分布が一様な砂州,高水敷化した砂州の順に多かった。また,砂州全体の植被率は,比高分布が一様な砂州が他の砂州に比べて有意に低かった。これらの結果より,砂州頭ワンドが形成される砂州の条件として,比高も植被率も高すぎず低すぎないことが示された。特に砂州頭裸地ワンドが形成されるためには,低水路沿いの植生管理や伐採が必要であると考えられた。