| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-422 (Poster presentation)
我が国の多くの河川で外来種であるハリエンジュ(Robinia pseudoacacia L.)の樹林面積が拡大している。このため、治水安全上懸念される河道内樹林は伐採処理などが行われている。しかし、短期間で樹勢が回復してしまう事例が多く、より効果的な樹林管理手法が求められている。本研究は、河道内のハリエンジュ林伐採後の萌芽再生抑制を目的に、現行の河川管理に従った形で、除草剤(グリホサート)の切株塗布処理による萌芽抑制効果と土壌へ溶出したグリホサート濃度を検証した。河道内樹林管理が行われる冬季に天竜川の中州に繁茂しているハリエンジュ林を伐採し、切株にグリホサートを塗布した。塗布後に土壌(30 cm 深)へ溶出したグリホサート濃度の経時変化を調べ、夏季に萌芽状況を調査した。グリホサートの土壌への溶出は、塗布後1日目が最も高い値を示し、2日目以降は、検出限界以下の濃度となった。グリホサートは切株塗布処理後に土壌へ溶出しても速やかに分解されていることが確認された。グリホサートの切株塗布処理は、株からの萌芽を完全に抑制した。しかし、水平根からの根萌芽に対しては効果が低く、対照区に比べて1/3の萌芽数の減少にしかならなかった。処理区における根萌芽の密度は、株の密度が高い場所ほど低くなる傾向があった。加えて、種子からの発芽も観察された。伐採作業時の人為攪乱によって発芽を刺激した可能性がある。冬季の河道内のハリエンジュ林へのグリホサートの切株塗布処理による萌芽再生抑制は、切株に対しては有効だが、水平根からの萌芽および種子からの発芽を抑制するには至っておらず、その効果は限定的である。