| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-424 (Poster presentation)
佐渡島では2008年より、環境保全型稲作:「朱鷺と暮らす郷作り」認証制度が開始され、その普及率は2012年には全耕作水田の2割を超えた。認証には、減農薬・減化学肥料に加え、生きものを育む農法として、「冬期湛水」、「江(水田内水路)の設置」、「ビオトープ」、「魚道の設置」のいずれかの実施が必要である。しかしながら、こうした農法による生物多様性への影響に関する知見は少ない。「冬期湛水」や「江」は、慣行農法では水が乏しい冬場や中干し期の水環境を変えることで水田内生物の生存率や生活史に影響し、食物連鎖をとおして、上位の捕食者密度に影響することが考えられる。そこで本研究は、「冬期湛水」や「江の設置」が水田の代表的な捕食者であるクモ類やカエル類密度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。生活史の課程で周辺環境を利用する水田生物の地域差を考慮するため、佐渡島の平野部8水田(江有4、江無4)および中山間地8水田(江有4、江無4)を調査地とした。2012年5月から9月にかけて、方形枠からの採集(徘徊性クモ類)、すくい取り(造網性クモ類)、畦のルートセンサス(カエル類)により調査を行った。同時に混獲された潜在的な餌生物や畦の草丈、水深などの局所データを記録した。その結果、カエル類では明瞭な傾向がみられなかった一方で、造網性クモ類の総個体数は平野部より中山間地で多く、潜在的な餌生物(ハエ目・ウンカ類)と関係性は平野部のみでみられるなど、農法だけでなく、周辺環境からの影響も考えられた。クモ類のなかでは、アシナガグモ科、カニグモ科、コガネグモ科など、種類によって農法や地域・季節による傾向が異なっていたことから、局所データや農法と餌生物密度の関係性を踏まえて考察を行った。