| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-427 (Poster presentation)
1.目的:極めて厳しい環境条件に存在する高山帯では、気候変動による生態系への影響が危惧され、高山生態系のモニタリングの重要性が認識されている。本研究では、高山生態系において重要な要因である積雪・融雪過程や植生のフェノロジーの空間分布を高時空間解像度で把握するため、従来の現地調査を補うモニタリング手法として、デジタルカメラを利用した新しい観測手法の検討を行った。
2.方法:北アルプス立山室堂を対象とし、市販のデジタル一眼レフカメラ(Canon EOS5D MarkⅡ)による約3年分の定点撮影画像を解析した。画素毎に記録されているRGB三原色のデジタルカウント値を用いて、統計的手法により積雪画素と非積雪画素に判別し融雪過程を調べるとともに、植生フェノロジーを反映する指標値(Green Ratio)を算出した。この指数が展葉に伴って最大増加率を示すことから、画素内の植生の生育の開始時期が推定できる。また、指数の低下から紅葉・落葉や積雪による生育終了時期が検出される。これらの解析と写真判読や現地調査に基づき、植生の生育時期を把握し、生育時期の年次間差異を面的に求める手法を開発した。
3.結果:個体~群落単位でのフェノロジーの空間分布を把握し画像化した。その結果、生育開始日や植生の種類は生育場所の融雪時期に強く影響を受けること、融雪時期は積雪の状況などにより年変動が大きいものの、微地形(凹凸)と関連することが示された。また、生育終了日は植生種に依存し、植生の生育期間と融雪時期や植生種との関連が判明した。このように、高解像度の定点カメラの画像解析は、高山植生のフェノロジーの変動抽出やその要因の解明に有効であることが示された。今後さらに多地点で解析し比較を行う予定である。