| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-435 (Poster presentation)

島嶼への外来雑草の侵略可能性を社会的要因で説明する

高倉耕一(大阪市環科研)・藤井伸二(人間環境大学)

繁殖過程における種間相互作用である繁殖干渉は、その頻度依存的な作用のため、近縁種間の置き換わりを強力に駆動する原動力として注目されている。これまでにも、室内実験個体群での検証や野外個体群のシミュレーション解析などから、過去に生じた種の置換において繁殖干渉が主要な役割を果たしてきたことが示唆されてきた。しかし、野外個体群での検証は困難であった。

本研究では、外来草本オオイヌノフグリ(以下オオイヌ)を対象の一つとした。オオイヌは種間送粉を介した繁殖干渉によって、在来種イヌノフグリの種子生産を顕著に阻害することがすでに知られており、オオイヌの侵入は在来種を駆逐する主要因であると考えられている。しかし、野外での個体群レベルにおける検証はなされていなかった。在来種がすでに稀少になっている本州本土地域でこの検証は困難だが、多数の島嶼環境を独立した試行とみなすことで、外来種侵入と在来種存続の関係、さらには外来種侵入可能性を規定する要因の解析が可能になるだろう。そこで、主に瀬戸内海における島嶼環境を対象として、オオイヌを中心とした外来草本植物の侵入と、近縁在来種個体群の存続の関係を解析し、さらに外来種の侵入可能性における過去のヒト・モノの動きの影響を分析した。本講演ではこの結果について報告する。

従来の島の生物地理学の中では、生物種の侵入・定着を説明する要因として中心的役割を果たしてきたのは、侵入先の地理的要因や環境条件、あるいは侵入種の生態的特性であった。しかし、現在では人間活動の影響は無視できないどころか、おそらく最大の移入経路であろう。このことから、生物種の移動分散過程を解析する上で、侵入可能性を左右する要因としてヒトやモノの流通を明示的に組み込むことが不可欠であろう。


日本生態学会