| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-438 (Poster presentation)
在来タンポポと外来タンポポの交配で出来た雑種タンポポは、すでに日本中に拡がっており、日本でセイヨウタンポポに見える個体の多くは雑種タンポポである。しかし、雑種タンポポの形成と拡大の過程は良くわかっていない。雑種タンポポは、無融合生殖で種子をつくるため、雑種の形成頻度と移動・定着の過程が、雑種個体群の遺伝的多様性(クローン多様性)と遺伝構造に強く影響すると考えられる。日本で出来た少数の適応的な雑種が無融合生殖で無性的に広範囲に拡大したとすれば、雑種集団のクローン多様性は集団内、集団間ともに低いことが期待される。そこで、大阪周辺の10地点の雑種タンポポ集団の遺伝的多様性を9種類のSSRマーカを用いて調べた。その結果、各雑種タンポポ集団には多様なクローンが含まれており、集団内の遺伝的多様性は高いこと、高頻度で広範に分布するクローンは見つけられず、集団間の遺伝的違いが大きいことがわかった。また、在来種(カンサイタンポポ)が混生しているかどうかで雑種集団を2グループに分けたところ、在来種が混生する集団には三倍体雑種が、混生しない集団には四倍体雑種が多いことがわかった。さらに、Neiの遺伝距離に基づいた系統樹解析から、これら2つのグループの雑種集団が遺伝的に異なっている可能性があることが示唆された。これらの結果は、大阪周辺では、少数の雑種クローンが無融合生殖で拡がったのではなく、雑種形成が何度も繰り返されて多様な雑種クローンが形成され、それらが拡がったことを示唆する。