| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-439 (Poster presentation)

小笠原西島におけるトクサバモクマオウ駆除が大型土壌動物群集に与える影響

*長谷川元洋,川上和人(森林総研),伊藤雅道(駿河台大),八巻明香(自然環境研究センター),阿部真(森林総研)

小笠原西島において、外来生物除去の一環としてトクサバモクマオウ(以下、モクマオウ)の薬剤注入による駆除が実験的に行われている。モクマオウは、在来植物の定着やそれに依存する生物の生存を脅かすとされる一方、その落葉層は土壌動物の住み場所餌資源ともなる。本研究では、モクマオウを駆除した林分と、維持した林分において、大型土壌動物相を比較し、その影響を把握することを目的とした。

モクマオウ優占林分、および在来種優占林分にそれぞれ10箇所のプロットを設けた。そのうち、モクマオウ駆除区、及び非駆除区を、それぞれに5箇所を設けた。モクマオウ駆除は本調査の2年前に行った。

ミミズ、等脚類、陸産貝類が個体数で優占した。ミミズは全てが外来種である一方、等脚類および陸産貝類には固有種が含まれるとされる。今回の調査では、ミミズの個体数は、モクマオウ優占、在来種優占の双方で、モクマオウ駆除の影響が明瞭でなかった。等脚類の個体数はモクマオウ優占林のモクマオウ除去区では土壌層において多かった。陸産貝類は、モクマオウ優占林、在来種優占林の双方で、落葉層の個体数はモクマオウ駆除区で少なくなるが、土壌層の個体数がモクマオウ駆除区で多くなった。以上から、大型土壌動物の全体の個体数に対して、モクマオウの駆除から2年の時点ではその影響は明瞭でなかった。しかし、落葉層と土壌層の個体数配分が駆除の影響を受ける分類群が見られ、これらの分類群では種組成が変化した可能性がある。今後、こうした分類群において、種レベルの解析を行う必要がある。また、1区のみ行った駆除後4年経過した林分の調査では、大型土壌動物の個体数が非常に少ない地点が観察された。今後、植生回復とともに、大型土壌動物群集の経年変化を追跡する必要がある。


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