| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-440 (Poster presentation)
近年、在来タンポポと外来タンポポの雑種の存在が日本各地で報告されている。雑種は無性的に種子生産できることから、特定の雑種のクローンが増加してきたとする見方があるが、各地で雑種形成が起こったためとも考えられる。特定のクローンが増加してきたのであれば、同じ遺伝子型を持つ雑種タンポポが複数サイトにわたって高頻度で見つかることが予想される。一方、各地で雑種形成が起こったのであれば、雑種タンポポはサイト内の在来タンポポと遺伝的に近いことが予想される。これらの予測を検討するため、複数サイトのカンサイタンポポ(以下、カンサイ)、セイヨウタンポポ(以下、セイヨウ)、雑種タンポポ(以下、雑種)についてクローン多様性と類縁関係を解析した。
京都府の4サイト(京都市内2カ所、綾部市、亀岡市)において、カンサイとセイヨウ様タンポポ(セイヨウと雑種)をそれぞれ20個体ずつ選び、葉を採取した。セイヨウ様タンポポはフローサイトメトリ―によりセイヨウと雑種を区別した。葉からDNAを抽出し、7つのSSRマーカーにより遺伝子型を決定した。これらの遺伝子型データはGenoDive、STRUCTUREを用いてクローン多型とサイト内外のタンポポの類縁関係を解析した。
雑種、セイヨウにはそれぞれ同じ遺伝子型をもつクローンが存在し、雑種では、同じ遺伝子型をもつクローンが異なるサイトからも検出された。しかし、これらの出現頻度は少なく、特定のクローンが増加しているのではないことが明らかになった。また、サイト内のカンサイやセイヨウと対立遺伝子組成が似ている雑種が存在したが、雑種の多くはサイト内のカンサイ、セイヨウとは異なる対立遺伝子組成であると推定された。したがって、京都周辺の雑種は他のサイトでたびたび形成されたものが起源であると考えられる。